「ミツバチ達と森をつくる」ビーフォレスト活動は、森や農園、家の周りなどに日本ミツバチの「巣箱」や単独で行動する花バチのために「ハチ宿」などを設置して、激減している花バチを増やすための繁殖環境づくりを進めています。
生物多様性回復のために
●日本ミツバチを守り増やす「ミツバチ巣箱」プロジェクト
●単独行動の花バチを守り増やす「ハチ宿」プロジェクト
活動の中で「日本ミツバチや花バチは、優しくて怖くない昆虫です・・・」と説明しても「ハチは怖い!」と駆除される方が多く、また、活動に非協力的な方がたくさんおられて残念です。
私たちは、自然は無限に供給されるものだと思い込んで、21世紀に至るまで自然資源の消費や環境破壊を行っています。その結果、人類が初めて直面する気候変動など、様々な環境問題が発生しています。
政府や自治体、研究者たちは、「講演」や「シンポジウム」、または「自然保護活動」などで同じような説明を繰り返しています。何故か、一部の人たちだけしか参加できない政策が多く、誰もが参加できる分かりやすく具体的な方法を持った活動の提示が望まれます。
ここでは、生物多様性の問題解決のために「なぜ、花バチを守るの?」を正しく理解できるように「新しい生物多様性の視点」「新しい食物連鎖の解釈」そして、問題解決のポイントや生物多様性回復のための実践的なビーフォレスト活動の背景をご紹介したいと思います。
生物多様性の「核」
「生物多様性」とは、地球上の全ての生きものたちの、命のつながりを「生物多様性(Biological Diversity)と呼んでいます。
注意しなければならないのは、「生物多様性」は、野生の生物だけではなくヒトや家畜、遺伝子組み換え生物、また、外来種もすべての生物を含めた言葉なのです。
「自然と人工が混在している状況」を表す生物多様性を単に「豊かな自然」と解釈するのは誤解があるようです。「豊かな自然環境」を再生するには、ただ沢山の生物がいれば良いのではありません。生物が繋がる生態系を築くためには、生物多様性の「核」となる重要な生物が存在しています。
その生物を意識しなければ的外れな生物多様性回復活動になってしまうでしょう。
「豊かな自然環境」とは、ただ沢山の生物がいれば良いのではありません。
植物や動物、昆虫、海洋生物、微生物に至るまで、地球上に生息する「すべての生き物」が「共生」や「食べる・食べられる」食物連鎖などによって変化しながらも生態系のバランスを保っています。
しかし、現在、人間が自然を過剰に消費し破壊したことによって、多様な生物の生息環境や生物そのものが減少して、生態系バランスを失い気候変動や環境問題が生まれたと言われます。
そのような状況に立たされた私たちの課題は、減少する生物多様性の保護と減少している生物多様性の回復です。そして、生物多様性や生態系にとって絶対に必要な生物種である「花バチ」と「動物媒花」の関係と役割りを生物多様性の「核」として、花バチ達を守り増やす活動を行っています。
地球は昆虫の星!
地球上の生物多様性を生物種数や割合で見てみましょう。
※実際の地球上の全生物は、185万種よりもはるかに多いと推測されています。未発見の生物がいっぱいあって3,000万種とも5,000万種とも言われています。この章の説明は185万種として進めています。
地球は、昆虫の星
地球上には、185万種の生物がいて、その内の100万種(54%)が昆虫です。
生物種の中で昆虫が一番多いため「地球は、昆虫の星!」と言われています。
この事実だけでも生物多様性を守るというのは「昆虫」を守ることが重要であることがわかります。
花バチは、2.2万種
100万種の昆虫の中で、草木の花に受粉する「花バチ」は、2.2万種います。
現在、日本には400種ほどの花バチが確認されています。ビーフォレスト活動は、この花バチを守り増やす活動です。
※BeeForestメモ
Bee「花バチ」とは、草木の花に受粉してお礼に花の蜜や花粉をもらって生きている昆虫(ポリネーター)です。日本ミツバチやマルハナバチのように群れで生活する花バチと、ハキリバチ、マメコバチ、マルハナバチ、クマバチなど単独で行動する花バチがいます。
※BeeForestメモ
ポリネーター(pollinator)とは、花粉媒介者や送粉者とも呼ばれ、花粉を運びながら受粉する動物全体を指します。花バチ、蝶、小鳥、一部のコウモリなどの動物のことです。
※BeeForestメモ
「動物媒花」とは、ポリネーターによって受粉してもらう植物種を指します。虫がポリネーターの場合は「虫媒花」とも呼びますが、この章では、まとめて「動物媒花」と呼んでいます。
●花バチが動物媒花を訪れて受粉や採蜜をしている風景
植物の8割が動物媒花
動物媒花は、22万種
地球上には27.7万種(15%)の植物がり、その内の22万種(約80%)が花バチや小鳥などのポリネーターの受粉を必要とする動物媒花といわれます。
動物媒花は「被子植物」で、おしべの花粉がめしべに受粉して、子房が果実に胚珠が種子に成る植物です。
※BeeForestメモ
動物媒花植物とは、地球上の植物の90%は被子植物といわれます。そして、その90%が受粉をするためにポリネーターを必要とする動物媒花植物です。動物媒花の多くは広葉樹で、地球の熱帯から温帯にかけてポリネーターが生息しやすい地域に分布しています。
※BeeForestメモ
風媒花植物とは、風に花粉を運ばせて偶然の受粉に頼るのを風媒花といわれます。風媒花は裸子植物が多く、その代表はスギやヒノキ、マツなどの針葉樹です。ポリネーターが生息しにくい地球の緯度の高い寒い地域に分布しています。また、風媒花や動物媒花以外に、菌や菌糸で増えるシダ類やキノコ類などがあります。
「花バチ」と「動物媒花」の関係
動物媒花(被子植物)の多くは、花バチたちによって受粉されます。
実と種子ができると、小鳥や動物がその実を食べて、移動しながらフンと共に種子を蒔く仕組みで森を広げています。たくさんの生物が共生して生物多様性の森が広がります。
BeeForestが、生物多様性の「核」
花バチ(ポリネーター)が動物媒花(被子植物)に受粉して、木の実を成らして種子を作ります。
花バチはポリネーターの中でも多様で圧倒的に数が多く、森を形成する上でとても重要な役割を担っています。
植物が花を咲かせて受粉して欲しいときに、花バチを花の色やカタチ、匂いで誘います。そして、花バチに奥に入って受粉を促すためにお礼のように「花の蜜」を出します。花バチが受け取るときに受粉するのです。花バチは「花の蜜」と「花粉」を持ち帰り食料として生活しています。
花バチ(Bee)と動物媒花(Forest)は「一体化」して生きています。どちらか片方がいなければ存在できない「一つの生命のカタチ」BeeForestと捉えることができます。
全く違う生物種が一体化して生きているカタチは、実はあらゆる生物においても言えるようです。生物が繋がって生きているという表現は、繋がって一体化している大きな「生命の輪」です。それを「生態系」と呼ぶのです。そして、それは地球が一つの生命という表現に至ります。
私たち人間もその一部なのですが、この生命の繋がりを自ら壊しています。
BeeForestが、森を作る=生物多様性の「核」
海も豊かにするBeeForest
皆さん、山は「土」で出来ていると思っていませんか?
地球に陸地ができ始めた頃の話ですが、火山の噴火などでできた山は、岩でできています。
大きな岩が砕けて岩石になって、粒子が細かくなると砂になり、もっと細かくなって水を含むと粘土になります。
造成工事中の山で、火山灰土に鉄分が含まれた「赤土」をよく見かけます。岩が主成分の山です。その山の表層に黒い堆積層が見られます。それが「土」です。
生物多様性の森は、何百年もかかって草や木、動物などの有機物が腐って黒く堆積する「土」ができます。堆積物が多くなると、その中で有機物を分解する菌類や微生物などが育ち栄養豊かな肥沃な土が生まれます。特に落葉広葉樹の森は、堆積物が多く土ができるスピードも早くなります。
森に大雨が降ると、この土や養分が川から海へ流されていきます。河口部に流された土で肥沃な農地が形成され、農地や都市が形成されました。
海に流された養分や土は、海底に堆積して海藻の森を形成し、海洋生物の生息環境が作られます。
花バチ達が受粉して森が生まれ、沢山の生物を育みます。生物多様性の森です。その森が、今度は海を豊かにして生物多様性の海をつくっています。
※BeeForestメモ
土と岩の違いとは、岩が多い山の「赤土」や「黒土」を1,000度ほどの高温で加熱すると、「赤土」の岩石は、陶器と同じように溶けて固まります。有機物(炭素)が多い「黒土」は燃えて炭素分だけ重量が減ります。
新しい食物連鎖
食物連鎖とは、生態系において、生物が他の生物を食べることによってつながり、エネルギーが移動する過程のことです。例えば、生産者の植物(草)を食べるウサギが現れ、ウサギを食べるキツネが現れ、キツネを食べるワシが現れるというように、複数の生物がつながりエネルギーが流れるのです。
従来の食物連鎖
食物連鎖は、下記の図ように緑色植物を「生産者」として「消費者」「分解者」が食物連鎖(食物網)によって物質が循環していると説明しています。
従来の食物連鎖の解説図
「生産者」
従来の食物連鎖では、植物(緑色植物)を「生産者」と呼びます。
緑色植物は、太陽の光と水と二酸化炭素で光合成を行い無機物から、デンプンや糖などの有機物を合成し、成長・繁殖します。
「消費者」
動物は「消費者」と呼ばれます。成長・繁殖した植物を食べる草食動物や、その動物を食べる肉食動物・雑食動物が消費者です。
「分解者」
細菌やカビ、微生物などを「分解者」と呼びます。分解者も消費者です。動物の死骸や糞尿、枯れて腐った植物や落ち葉などの有機物を分解し、無機物や土にしています。
分解者の働きで生じた無機物は、植物が栄養分として吸収して成長・繁殖します。
花バチは、食物連鎖の「核」
ビーフォレスト・クラブでは、従来の植物だけを「生産者」として説明している食物連鎖(食物網)の解釈を図のように改めています。
光合成によって光エネルギーを利用して有機物を合成する植物は、食物連鎖において生物を食べることなく成長できます。しかし、花バチに受粉をしてもらわないと繁殖できない動物媒花は、花バチがいないと生産者にはなれません。また、花バチは、他のポリネーターと異なり、生物ではない「花の蜜」と「花粉」を植物からもらって生きる特殊な消費者です。
よって、「植物(動物媒花)」と「花バチ」は一体化して食物連鎖の基盤をつくる生産者といえます。
そして、「花バチ」は、なくてはならない役割を担っています。
新・食物連鎖の図:「花バチ」は、植物と共に生産者です
もし、花バチがいなくなったら・・・
食物連鎖において、ひとつの生物種の存在や影響が、別の生物や生態系にも影響を与えます。
例えば、ある生物が減少すると、その生物が食べていた生物の数が増加することがあり、その結果、他の生物の数が減少する可能性があります。
生態系においては、さまざまな要素が相互に依存し、バランスを保つことが重要です。このような相互依存関係を考慮しながら、生態系の保全や管理が行われることが必要です。
特に生産者である「花バチ」がいなくなると、その減少規模に応じて植物の生産も減少します。そして、食物連鎖全体の生態系が壊れて生物多様性が喪失します。
もし、花バチがいなくなったら、数年後には人類も滅びる・・・(アインシュタイン博士の言葉と言われています)
花バチがいなくなると食物連鎖が破壊されます
生物多様性は、野生の生物が基本
生物多様性は、すべての生物を対象としています。しかし、食物連鎖や生態系の持続可能な状態を保つたには、その地域に生息している野生の生物の構成が基本です。
ところが実態は、「遺伝子組み換え生物」「家畜動物」「養殖魚介類」「外来種」などたくさんの人工的生物が導入されて食物連鎖や生態系を壊しています。
例えば「都市養蜂」で家畜の西洋ミツバチ養蜂を行う場合(人工的生物の導入)、生物多様性の評価を行い生態系への影響を予測することが重要です。しかし、生物多様性や生態系を守ると言いながらもそのような検証、評価は確認できません。
事業関係者や行政の方達も、「家畜を増やしても生物多様性に悪いことはない」「西洋ミツバチ養蜂によって野山の草木も受粉して生物多様性に貢献している」と、本気で信じている方が多いようです。
生物多様性再生や自然環境再生と称して、食物連鎖や生態系の悪影響を検証・評価せずに実施しているのが実態のようです。
例えば、野生の哺乳類や家畜の実態を見ると・・・
◉地球上の哺乳類の34%は人間です。62%が家畜。残りの4%しか野生動物はいません。
◉2023年1月、「鳥インフルエンザで過去最高の1,000万羽以上のニワトリが処分されました。」とテレビのニュースが伝えています。
生物多様性は、野生生物が基本です。人工的な生物が、食物連鎖を壊して生物全体に悪影響を与えるという知識と現実を共有しなければなりません。その上で、社会としてどのような選択をすべきなのかを決める必要があるでしょう。