2014年9月7日
奈良公園で一番大きな「幹周り3.8mコナラの巨木」が「ナラ枯れ病」で枯れそうです。
私達にドングリを沢山落としてくれたその巨木は、シルクロード記念館の北東部の丘にあります。
虫捕獲用のトラップが沢山取り付けられていますが・・・あまり捕獲は出来ていないようです。
我が家の北東に御笠山と春日山原始林、東に高円山(たかまどやま)があります。高円山は、夏なのに紅葉のようにナラ枯れによって枯れ始めています。
春日山原始林の北部、若草山周辺では既に沢山の樹が枯れています。
ナラ枯れは、本州の日本海側を中心に広がっていたのが、太平洋側にも広がってきました。奈良公園には北部の京都側から移ってきたようです。
北部から南部にどんどん広がっています。
ナラ枯れ
ナラ枯れとは、正式にはブナ科樹木萎凋病と呼びます。
体長5mmほどの甲虫、カシノナガキクイムシ(以下「カシナガ」)が病原菌を媒介して、ナラ類、シイ・カシ類の広葉樹を枯らす「樹木の伝染病」です。大きな木が狙われます。
病原菌は「ナラ菌」と呼ばれる糸状菌 ( カビ ) の仲間です。
カシナガのメスの背中には、菌のうという貯蔵器官があり、これにナラ菌を入れて、枯れた樹から生きている樹へと移動します。
樹木の中でナラ菌を増やして、それを食べながら繁殖していきます。
穿孔(せんこう)された樹木は、ナラ菌によって急速に衰えて枯れます。
日本の自然林の中心は、シイ・カシ類の広葉樹です。(左画像はシイの花が咲く5月の自然林)
毎年、ドングリを落としながら森を再生して、鹿やイノシシ、熊、狐、リス、ウサギなどの動物たちも養いながら、河川を通じて農業や漁業にも生態系として繋がっています。
自然林の森が無くなれば、日本という国は・・・それは恐ろしい状況が想像されます。
どう食い止めるか
各機関が、いろいろ模索してやっていますが対処療法的であって、根本的な対応策は未だ見つかっていません。
原因もいろいろ想定されていますが、その中で一番有力視されているのが、
カシナガが好むナラ類、シイ・カシ類の大経木が伐採されなくなり増えたためだという指摘があります。
昔、里山の木は、椎茸の原木や薪炭林、また木材などに活用するために樹齢15〜20年の若齢林を切って使いました。
里山保存活動でも大経木を残すことが当たり前のようになっています。
若齢林でのカシナガの繁殖は非常に少ないという事実があることから、カシナガが好む大経木が増えたことが繁殖の条件となったという仮説です。
しかし、里山ではない原始林や自然林においても、カシナガの繁殖は止まりません。
ナラ枯れの現状を見れば、ナラ類、シイ・カシ類の若木が残り、それによって森が自然再生されると考えるには、あまりにも楽観的ではないかと思います。
里山保全や、林業政策など、人間の経済的な価値判断で自然を解釈して、大規模に開発や手を入れることは自然のバランスを崩してしまうことになります。
複雑な自然の生態系バランスを人間が理解できることは不可能です。
極力、自然に任せるべきです。
現状は、対処療法的対応を行うしかありませんが、もし、カシナガによって枯れた山が落ち着いた後は、自然林のまま(見守る)を維持すること以外に森を守ることは無いと考えます。
私は「グリーンあすなら巨樹巨木の会」で、巨樹巨木の保存や紹介する活動を行っています。(巨樹巨木の会は、2014年に退会し、「ミツバチ達と森をつくる」ビーフォレスト・クラブを設立して活動開始しました。)
2011年頃に、春日山原始林の南部の柳生街道沿いの高円山側の森1.5haを奈良県から借りて、「自然の森の学習林=滝坂の森」づくりを進めています。
森の木々を観察して、木肌や木の葉、ドングリや樹形、花などから木々を見分けることを学習したり、自然環境に親しむ自然の森として活用出来ればと考えています。
左の画像は、森にあるクヌギの樹をカシナガから守るためにメッシュで木を包む作業を行っています。