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「梨」の受粉が今年は大変!?

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ことし“梨”が食べられなくなってしまうかも!?「花粉の輸入禁止」で受粉作業に影響大 どうする?【大石が聞く】2024年4月29日(月) 動画はこちら→

今年、日本の梨の生産に深刻な危機が訪れています。中国からの花粉の輸入禁止が理由で、受粉作業に大きな影響が出ているのです。中国では、梨やリンゴの葉や枝が火傷病によって枯れる被害が広がっており、農林水産省はこの病気の日本への侵入を防ぐために花粉の輸入を禁止しました。

梨の生産は異なる品種の花粉を使って受粉を行う必要があり、これまで多くの農家が中国から花粉を輸入していました。しかし、今年は輸入が禁止され、自家採取でしか対応できない状況となっています。特に大規模な梨農園では、花粉を手作業で採取するのは非常に手間がかかり、コストもかさみます。

また、これまでは西洋ミツバチなどの家畜昆虫を利用したポリネーション(受粉)も行われていましたが、病気や農薬の影響でミツバチの数が減少し、費用もかかりその効果も低下しています。
手作業による人工授粉や液状にして花粉を噴霧する方法もありますが、これらの人為的なポリネーションにはリスクがあります。具体的には、作業の手間やコストが高くなるだけでなく、環境への影響や、長期的な持続可能性が確保できないといった問題があります。

愛知県安城市など梨の産地では、この問題に対して地元の農家同士が花粉を譲り合うなどして対応していますが、全国の梨農家の約3割が輸入花粉に頼っているため、生産が危ぶまれています。

このような状況を踏まえ、野生のポリネーター(花粉媒介者)や生息環境を回復させる方向へ舵を切ることが、持続可能な農業のために重要だと言えます。人為的な対応の限界が明らかになっている今こそ、自然の力を活用する取り組みが求められています。

「花バチ増やそう! ハチ宿作ろう!」 NPO法人 ビーフォレスト・クラブ 

梨の受粉方法

梨の受粉方法は大きく2つあります。

1. 自然受粉
異なる品種の梨の木を混植することで、ミツバチやマルハナバチなどの昆虫による自然な受粉を期待する方法です。最も一般的な方法ですが、現在では花バチが減っているため結実率が不安定になる場合があります。

2. 人工授粉
手作業で花粉を媒介することで受粉を促す方法です。確実に受粉させることができるため、安定した結実率が期待できます。ただし、手間がかかるというデメリットがあります。

人工授粉には、さらに以下の方法があります。
筆授粉:筆を使って花粉を花柱に直接つける方法。最も基本的な方法ですが、時間がかかります。
梵天授粉:梵天(ぼうてん)と呼ばれる房状の道具に花粉をつけて、花全体に振りかける方法。筆授粉より効率的に作業できます。
送粉機による授粉:送粉機を使って花粉を樹全体に噴霧する方法。大規模な果樹園でよく利用されます。
その他

受粉樹:受粉樹とは、受粉を目的として栽培する別の品種の梨の木のことです。自家不和合性の品種の場合、受粉樹がないと結実しません。
花粉:人工授粉を行う場合は、花粉が必要です。自家採取した花粉を使うこともできますが、市販(輸入)の花粉を購入することもできます。

※梨は自家不和合性のため、同じ品種の花粉では受粉できません。受粉樹は、異なる品種の木である必要があります。
・受粉の適期は、品種や気候によって異なりますが、一般的には開花中から数日間です。
・人工授粉を行う場合は、天気の良い乾燥した日を選ぶことが重要です。
・受粉後は、摘果や薬剤散布など、適切な栽培管理を行うことで、良質な果実を収穫することができます。